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心のつぶやきを吐き出す裏ブログです。
ブログのプロフィール
〈管理人名〉 O-bake

〈趣味〉 創作とクラシック音楽

〈主な内容〉
創作に関する覚書
ごくたまに掌編を掲載
テリトリーは童話からYAまで

〈お願い〉
時々、言葉が足りないために意味不明な文章があったり、攻撃的な文章がありますが、ここは毒吐き場なので、どうぞ見過ごしてやってください。

〈連絡先〉
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〈本家ブログ〉
びおら弾きの微妙にズレた日々
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『ちっちゃい君へ☆10のお題』
配布元 La・campanella ~ラ・カンパネラ~


6:もとめてくる手

少女はもう長いこと、その部屋にいた。そこにあるのは、白い天井とペパーミントグリーンのカーテンと身の回り品をおさめた茶色のキャビネット、それに薬品のにおい。ベッドは身体の一部にと言ってもいいほどだった。
動けない体と活発な想像力。空想の世界で波乱万丈の旅をして帰ってくるたびに、少女は現実との落差に落胆する。戻ることのない旅に出たいと、彼女は切に願った。白い天井とうす緑色のカーテンを二度と見なくてすむ旅に。

浅い眠りの中で少女は夢を見た。
彼女は鳥かごの鳥だった。外の世界を見ることはできても、飛び出していくことはできない。羽をばたつかせて彼女はもがく。甲高い鳴き声をあげる。羽はいつしか人の手となって、かごのすき間から空をつかもうとしてた。
──お願い、誰かここから出して。かごの中から連れ出して。
すぐ近くを何羽もの黒い小鳥がとんでゆく。少女の方を見向きもせずに。
──ねえ、お願いだってば!
少女は必死で最後の一羽を捕まえようとしたが、あと少しのところでするりとかわされる。その鳥は去らずに彼女をじっと見た。強い風が吹きぬけた。その瞬間、彼女は黒い鳥たちの正体を知った。
──まだあんたの番じゃない。
──順番なんかどうでもいいいの。私はここから逃げたいの。
──その前にやることがあるだろうが。きっちり現実とカタをつけたら迎えに来てやってもいいぜ。

鳥も鳥かごも消えた。
少女は白い天井を見つめていた。それからゆっくりと首を横に向けた。目に入ったのは、カーテンでも白い壁でもなく、少女を愛し心から気づかう家族の姿だった。
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