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心のつぶやきを吐き出す裏ブログです。
ブログのプロフィール
〈管理人名〉 O-bake

〈趣味〉 創作とクラシック音楽

〈主な内容〉
創作に関する覚書
ごくたまに掌編を掲載
テリトリーは童話からYAまで

〈お願い〉
時々、言葉が足りないために意味不明な文章があったり、攻撃的な文章がありますが、ここは毒吐き場なので、どうぞ見過ごしてやってください。

〈連絡先〉
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〈本家ブログ〉
びおら弾きの微妙にズレた日々
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『ちっちゃい君へ☆10のお題』
配布元 La・campanella ~ラ・カンパネラ~

9:だきしめる身体

小さな身体から小さな魂が抜け出したのは、あるパチンコ店の駐車場内だった。
街路樹の若葉が美しく茂りはじめた季節のこと。
「少しぐらいだいじょうぶよね」と、ぽつんと車中に置いていかれた身体は、じわりじわりと押し寄せる熱気に耐えることができなかった。

数時間後、母親はぐったりと動かない我が子を、最初は名前を呼びつつ激しくゆすり、やがて言葉を失って、強く強く抱きしめた。到着した救急隊員が無理やり引き剥がすまで。

母親の周りでくるくると漂う小さな魂を、迎えの死神がやってきて捕まえた。
落ち着かない魂を彼は見つめ、その汚れの無さに感嘆の声を上げる。
「これはまた、冥界でクリーニングする必要なんかなさそうだな」
小さな魂は死神の手中で激しくもがいている。
「そんなに暴れるなよ。そりゃ、こんなに早く親と別れるなんて思わないよな、普通……。でもどんなに短い生でも、意味がないわけじゃない」
死神は悲嘆にくれる母親をちらりと見やる。
「現にお前は、あの迂闊な母親に命の重さを、これ以上できないほどくっきりと教えてやったじゃないか」
なおも暴れようとする魂を、死神は器用に切り離して持ち去った。ここに長居しても意味はない。それに彼は知っていた。後に残された母親が立ち直るには恐らく相当の時間がかかるし、場合によっては一生立ち直れないかもしれないが、そうやって魂は鍛えられていくのだと。
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