『ちっちゃい君へ☆１０のお題』
配布元　La・campanella　～ラ・カンパネラ～


１：むじゃきな笑顔

あの写真、いつ撮ったやつだろう？　

霊体だけ、つまり魂と呼ばれる存在になってしまった少年は、仏間の窓から自分の遺影をながめて考えつづける。
死ぬ前の数年間、彼はまともに笑った記憶がなかった。まるで汚物のように、さもなければ透明人間みたいに扱われる生活に疲れきっていたから。

なのにどうして、あんなふうに笑っている自分がいるんだろう。

確かに彼は笑みを浮かべていたのだ。自分の手でこの世のすべてを振り払うのだと、ここから飛び立って自由になるのだと、学校の屋上で決心したその瞬間に。
皮肉にもその瞬間を、クラスメートが携帯のカメラで捕らえていた。
しかし、その出来事に思い至ることはなく、彼はもうずっと何年もの間、死神の迎えすら受けられず、かといって他にどこへも行けず、考え続けているのだった。