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心のつぶやきを吐き出す裏ブログです。
ブログのプロフィール
〈管理人名〉 O-bake

〈趣味〉 創作とクラシック音楽

〈主な内容〉
創作に関する覚書
ごくたまに掌編を掲載
テリトリーは童話からYAまで

〈お願い〉
時々、言葉が足りないために意味不明な文章があったり、攻撃的な文章がありますが、ここは毒吐き場なので、どうぞ見過ごしてやってください。

〈連絡先〉
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〈本家ブログ〉
びおら弾きの微妙にズレた日々
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『ちっちゃい君へ☆10のお題』
配布元 La・campanella ~ラ・カンパネラ~

3:いやされる体温

「もう行ってもいいよ」
その子は言った。
東の空がほんのり明るくなり、スズメたちが鳴き声を交わしはじめるころだった。
なかなかこの世から離れられない魂に一晩中つきあっていた死神は、いくぶんほっとして大鎌を取り上げた。
「気が済んだのか?」
「うん」
まだ人の形をしている魂は、両手を胸に当て、きっぱりと答えた。もの問いたげな死神の視線を受けて、ほほえみさえする。
「みんなの温かさをしっかりとたくわえたから」
死神は思い出す。家族は通夜の間、それこそ夜通し我が子に付き添い、しきりと冷たい顔や手をさすっていた。まるでそうすれば生き返るかのように。そんなことをしても悲しみが深くなるばかりじゃないかと、彼は冷ややかに見ていたのだが――。

それなら、と死神は大鎌をふるった。
完全に現世から切り離された瞬間、魂はもう、温もりとか冷たさとか絶望とか希望とか、そんなものとは無縁の世界にいたのだった。
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