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心のつぶやきを吐き出す裏ブログです。
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〈管理人名〉 O-bake

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表のブログで書いたように、先日、ワーグナーの歌劇「パルジファル」の全曲版を聞いてきた。演奏会そのものについての感想は表ブログで書き綴ったが、パルジファルという劇そのものについての考察は別枠で書いたほうがいいだろうと思い、とりあえずはここに書く。



十字架にかけられたキリストの身体を傷つけた聖槍と、その血を受けた聖杯を題材にしたこの物語は、一応素材となる物語はあるものの、ほとんどがワーグナーによる創作だという。

あらすじとしては、傷ついた聖杯の守護者アムフォルタスを「穢れ無き愚か者」パルジファルが救うというもの。アムフォルタスが傷を追った理由は、魔女クンドリの誘惑に落ちて聖槍を取り落とし、その槍によって傷つけられてしまったためだ。この傷は奪われた聖槍の力でしか癒やされないが、今のアムフォルタスには取り返しにゆく力がない。神のお告げによれば、この聖槍を取り戻しにゆくのは「穢れ無き愚か者」であり、彼は神によって遣わされるのだという。そしてパルジファルがやってくる。
クンドリは長い時を生きてきた魔女であるが、この話の時点では魔法使いクリングゾルによって操られ、聖杯騎士を堕落させるための道具として使われている状態。決して自分の意志で堕落させているわけではなく、だからまともな時の彼女は常に罪悪案を背負い償いの機会を求めてた。同時に生きることに疲れ果て、ことあるごとに「ああ疲れた、眠りたい」と、ひたすら休息を切望している。そのため、動く必要がない時は地面に身体を投げ出している模様。
邪悪な魔法使いクリングゾルが、なぜ聖杯騎士団を目の敵にするかといえば、かつて入団を希望したのに拒否され、ならば欲望の源である男性のアレを切って捨ててしまえと、本当に自らを去勢したにもかかわらず拒否され続けたからという、まったく逆ギレもいいところだが、実際の世の中にはそういう話があちこちに転がっているので笑えない。
パルジファルもまた、簡単にはアムフォルタスを救えない。最初は聖杯城から拒否され、荒地をさまよったあげくクリングゾルの城に迷い込み、クンドリの誘惑を受ける。しかし、何がどう作用したのか、パルジファルはクンドリを退け、救済者として目覚め、クリングゾルを倒してしまう。その後アムフォルタスのもとへ向かうはずだったが、クンドリの呪いを受けて、正しい道が辿れなくなってしまう。そうして数ヶ月後、傷つきボロボロになった姿でようやく聖杯城へたどりつく。そしてアムフォルタス王と聖杯城は救われ、クンドリは「死」という永遠の休息を与えられるのだった。

この物語をキリスト教と関連付けて考えると、聖槍によって脇腹に傷を受けた人間(=アムフォルタス=イエス・キリスト)を救済する構造なので、古くなり生命力の衰えたキリスト教をさらに救済する物語だと見ることができる。あるいは、キリスト教から離れ、傷つき深い苦悩の中にある人々すべてを救済する物語と読むことも可能で、そうすると宗派を超えた普遍的な救いを見出すことができる。
これをキリスト教の再生ととるか、キリスト教を超えるさらに大きな宗教の存在を示唆するととるか、は意見の別れるところだと思うが、救済者が、最初は無垢な愚か者であるという設定はエデンの園に暮らしていた頃のアダムを連想させる。アダムはイブの誘惑により知恵の実を口にして、知恵を得るが楽園を失う(=苦労の始まり)わけだが、パルジファルの場合はクンドリの誘惑によって知恵を得、知恵を得るだけではなく苦悩を得ることによって救済者になるところが興味深い。

このクンドリがなかなか奥深いキャラクターで、無垢だったパルジファルに知恵を与えたという点で、エデンの園でアダムに知恵の実を食べさせたイブになぞらえることができるかもしれない。
もともとクンドリは謎の多い魔女で、世の中の出来事はなんでも知っている上、何百年生きているのか、年齢も定かではなく、前世(?)でもさんざんやんちゃをやらかしていたようだが、パルジファルと邂逅した時点では、逆ギレの魔法使いクリングゾルに操られ、彼の命ずるままに男たちを堕落させている状態だった。クリングゾルをヘビに見立てることはでかきないか。
ここから先は考察どころか妄想のレベルになるのだが、クンドリがイブのその後だとしたらどうだろう。楽園を追われ、アダムを失い、彼の生まれ変わりを延々と探し求めていたりしたら嬉しいなあ。そしてパルジファルに出会い、ようやく思いを果たして救済され、長い苦しみの生に終止符を打つことができたと。
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