心のつぶやきを吐き出す裏ブログです。
ブログのプロフィール
〈管理人名〉 O-bake
〈趣味〉 創作とクラシック音楽
〈主な内容〉
創作に関する覚書
ごくたまに掌編を掲載
テリトリーは童話からYAまで
〈お願い〉
時々、言葉が足りないために意味不明な文章があったり、攻撃的な文章がありますが、ここは毒吐き場なので、どうぞ見過ごしてやってください。
〈連絡先〉
管理人へのメッセージは、こちらのフォームからどうぞ
〈本家ブログ〉
びおら弾きの微妙にズレた日々
(一方通行です)
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02 上映時間とポップコーン
子ネコは進む。塀から塀へ飛び移り、生垣をくぐっては反対側から抜け出し、本能の羅針盤が指し示す方向へ進む。
知らない空気にかこまれて、子ネコはひどく神経質だった。人のいる場所が恋しく、いつしか雑踏へ向かっていた。角を曲がるたび、道を渡るたびに、空気に混じり物がふえる。食べ物や煙草や車の排ガス、作り物の花の香り。
ある建物のわきに来たとき、ひときわ香ばしいにおいがそば鼻をついた。子ネコは空腹を感じ、ふらふらとにおいのもとへと導かれてゆく。人間の足音と騒音が大きくなったと思ったら、そこは建物の入り口だった。人工の光がともり、絵のついた大きな看板がかかげられている。においは看板の下にある入り口からただよってきているようだった。
「やだ、子ネコじゃん。かわいい!」
その声にあわててものかげに隠れる。そっと顔を出すと、若い女の子がきらきらした目で子ネコを見ていた。
「フライドポテト、食べる?」
その子は持っていた袋からポテトを一本ひきぬいて差し出した。子ネコは迷った。入り口からただよってくるにおいとはちがう。それに、見知らぬ人間だ。
「こわくないよ、おいで」
女の子はにこっと笑った。その笑い方が飼い主となんとなく似ていた。子ネコは足を踏み出した。だが、時を同じくして人間の男が女の子の横にきた。子ネコはさっと身を隠した。
「遅れてごめん」
「あーあ、ネコがどっか行っちゃった。アメリカンショートヘアっぽいきれいな子だったのに」
「ネコ?」
男は怪訝な顔をする。
「もうちょっとで餌付けできたんだよ」
「野良なんかに餌やってどうする。もう行かないと映画が始まるぞ」
「うん」
女の子はネコにやるつもりだったポテトを自分の口にほうりこんだ。
それから10分もすると、目の前をうろうろしていた人間たちは、ほとんどが入り口にのみこまれ、あたりはすっかり静かになった。
子ネコは看板の陰から出てきて、コンクリートの上に白いかけらを見つけた。ふわりとしてあの香ばしいにおいがした。食べてみた。塩辛かったが、なかなかいけた。
子ネコは進む。塀から塀へ飛び移り、生垣をくぐっては反対側から抜け出し、本能の羅針盤が指し示す方向へ進む。
知らない空気にかこまれて、子ネコはひどく神経質だった。人のいる場所が恋しく、いつしか雑踏へ向かっていた。角を曲がるたび、道を渡るたびに、空気に混じり物がふえる。食べ物や煙草や車の排ガス、作り物の花の香り。
ある建物のわきに来たとき、ひときわ香ばしいにおいがそば鼻をついた。子ネコは空腹を感じ、ふらふらとにおいのもとへと導かれてゆく。人間の足音と騒音が大きくなったと思ったら、そこは建物の入り口だった。人工の光がともり、絵のついた大きな看板がかかげられている。においは看板の下にある入り口からただよってきているようだった。
「やだ、子ネコじゃん。かわいい!」
その声にあわててものかげに隠れる。そっと顔を出すと、若い女の子がきらきらした目で子ネコを見ていた。
「フライドポテト、食べる?」
その子は持っていた袋からポテトを一本ひきぬいて差し出した。子ネコは迷った。入り口からただよってくるにおいとはちがう。それに、見知らぬ人間だ。
「こわくないよ、おいで」
女の子はにこっと笑った。その笑い方が飼い主となんとなく似ていた。子ネコは足を踏み出した。だが、時を同じくして人間の男が女の子の横にきた。子ネコはさっと身を隠した。
「遅れてごめん」
「あーあ、ネコがどっか行っちゃった。アメリカンショートヘアっぽいきれいな子だったのに」
「ネコ?」
男は怪訝な顔をする。
「もうちょっとで餌付けできたんだよ」
「野良なんかに餌やってどうする。もう行かないと映画が始まるぞ」
「うん」
女の子はネコにやるつもりだったポテトを自分の口にほうりこんだ。
それから10分もすると、目の前をうろうろしていた人間たちは、ほとんどが入り口にのみこまれ、あたりはすっかり静かになった。
子ネコは看板の陰から出てきて、コンクリートの上に白いかけらを見つけた。ふわりとしてあの香ばしいにおいがした。食べてみた。塩辛かったが、なかなかいけた。
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