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心のつぶやきを吐き出す裏ブログです。
ブログのプロフィール
〈管理人名〉 O-bake

〈趣味〉 創作とクラシック音楽

〈主な内容〉
創作に関する覚書
ごくたまに掌編を掲載
テリトリーは童話からYAまで

〈お願い〉
時々、言葉が足りないために意味不明な文章があったり、攻撃的な文章がありますが、ここは毒吐き場なので、どうぞ見過ごしてやってください。

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〈本家ブログ〉
びおら弾きの微妙にズレた日々
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君の街まで約5分
配布元 約30の嘘

すべりだい→公園→夜→??
夜の公園という素材は大変好みです。
おっと、書き忘れてましたが、今回の主人公は子ネコです。我が家に帰るまでの小冒険。

05 すべりだい

 大通りから暗がりにむかって道を数本横切る。あたりはあっという間に静寂の中に沈む。道を照らす街路灯が、その明かりのせいでかえって物寂しさを強めている。その下を何人かの人間たちが足早に、あるいは自転車で過ぎ去った。
 子ネコは時おりすれ違う車のヘッドライトがまぶしくて、植え込みや電信柱の影にかくれながら歩みをすすめた。やがて開けた一角が目に入る。
 道の先にいくつもの自転車のライトが見えた。こっちに近づいてくる。子ネコは植え込みの中に隠れた。
 自転車の集団は公園の入り口で止まった。子どもたちが前かごに入ったカバンに手を突っ込み、何か取り出す。街灯の光を受けて鈍く光るそれは、四角い金属の物体だった。彼らはめいめいそれをもったまま、公園を占拠した。ある者はブランコにすわり、あるものは鉄棒に腰掛け、また、3人ばかりならんでベンチにすわるグループもあった。もっとも目を引いたのは、すべりだいの上にすわりこんだ少年だった。
 彼は居場所を決めると、手にした四角い物体を開いた。中から光がもれてきて、顔を薄青く照らし出す。その目は真剣に光を見つめ、指はせわしなく動く。他の子たちも同じだった。
 やがてすべりだいの少年がつと顔を上げ、左手を持ち上げて何かを確かめると、その物体を片付た。地面まですべっておりる。すると他の子たちも同じように片付けて立ち上がる。
 彼らは来たときと同じように静かに去っていった。生温い存在感を残して。
 子ネコが植え込みから出ようとすると、次の集団が現れた。あわてて頭をひっこめる。自転車には乗っていなかったが、今度も人間の子どもたちだった。
 彼らはほとんど暴力的なまでに動き回った。ついたり消えたりする、頼りない明かりの下、ブランコをこれでもかと高くこぎ、鉄棒に片足をひっかけてはくるくる回り、ジャングルジムから飛び下り、すべりだいを下からのぼり――。
 それに飽きると鬼ごっこやかくれんぼが始まった。去ろうと思えば去れたのに、つい彼らの姿に見入っていた子ネコはふと気がついた。奇妙なことに、明かりがつくと彼らの姿は薄くなり、暗くなった瞬間には生き生きと浮かび出る。
 やがてすべりだいのてっぺんで、ひとりが叫んだ。「次に行こうぜ!」
 するとそれまで遊んでいた子どもたちはさぁーっと姿を消した。同時に、あれほど揺れていたブランコがぴたりと止まった。あとに残された静けさが耳に痛かった。 
 子ネコは今度こそ誰もいなくなった公園を歩き回る。すべりだいに挑戦してみる。夜の子どもたちがやっていたように、下からのぼってみる。足が滑った。思わずツメを立てた。およそこの世で聞こえうる中で最悪の音がひびいた。子ネコの毛が逆立ち、しっぽがふくらんだ。
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