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心のつぶやきを吐き出す裏ブログです。
ブログのプロフィール
〈管理人名〉 O-bake

〈趣味〉 創作とクラシック音楽

〈主な内容〉
創作に関する覚書
ごくたまに掌編を掲載
テリトリーは童話からYAまで

〈お願い〉
時々、言葉が足りないために意味不明な文章があったり、攻撃的な文章がありますが、ここは毒吐き場なので、どうぞ見過ごしてやってください。

〈連絡先〉
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〈本家ブログ〉
びおら弾きの微妙にズレた日々
(一方通行です)
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君の街まで約5分
配布元 約30の嘘

風邪のため、中休みが入ってしまいました。
だんだん話が意味不明になっていくような…

04 立ち読み17分

 子ネコは人目につく表通りをさけて、広い建物の裏に来た。ここは裏口に照明がひとつついているぐらいでほどよく暗い。安心して通り抜けられると思ったが、それは甘い読みだった。
「ちょっと、そこの子、みかけないねぇ」
 だみ声が背中からふりかかってきた。見上げると、ゴミ用コンテナの上にでっぷり太った白黒のぶち模様のネコがいる。もう何年生きているのか、年季のはいった顔つきだった。
「挨拶ぐらいしていきなよ」
 子ネコはびくんとして、それでも後ろ暗いところはないので素直に向き直る。
「こんばんは」
「そういうのじゃなくてさ、よその敷地を通るんだからそれなりの言葉があるだろうに」
「し、しつれいします」
「ふん」
 白黒ネコはじっと子ネコを観察した。それから表情をゆるめた。
「まあ、子どもだからそのぐらいで勘弁してやろうかね。あんたの名は?」
 子ネコは飼い主に呼ばれていた名を告げた。
「……てことは、あんたナナシさんちの子ネコかい?」
 ナナシという言葉のひびきには、かすかに覚えがある。子ネコはとりあえずうなづいた。
「あたしゃキャシー。そこの本屋のネコさ。これでも看板ネコ。今は休憩中だけどさ」
 キャシーは大きな体をゆすってみせた。子ネコは後ずさりしたくなるのをこらえつつ思った。このおばさんだって、昔はスタイルも顔もよかったのかもしれない。だが、本当のところ、人間は不細工さに愛嬌を感じていたのだ。
 子ネコの不審そうな目つきを受け、キャシーは説明した。
「看板ネコっていったって、たいしたことじゃないよ。我慢強く店の入り口にすわって頭なでられてりゃいいんだから。愛想ふりまいとけば、たまには甘い餌ももらえるし。おかげでこの体!」
 キャシーは自嘲気味にハハッと笑った。
「それで、あのう」
と子ネコはこわごわ口をはさんだ。
「ナナシさんの家はどこ?」
「どこって!」
 でぶのキャシーはまた笑った。胴体をたぷんたぷんとゆらして。
「すぐそこ。ここから5分もないよ。え、どうやっていくかって? 公園のちかくだよ。すぐそこに見えるだろ。公園をすぎてちょっとまっすぐに行って一つ目の角を曲がってもう一回曲がって……」
 キャシーの説明はある意味いい加減だったが、とにかく子ネコは彼女の説明をすべて記憶した。そして礼を言って立ち去ろうとした。
「ちょっと、あんた御代は? 情報がタダじゃないことぐらいわかるだろう? そりゃあたしだって店の御主人だって、15分くらいの立ち読みには目をつぶるけどねぇ。それ以上になるとあたしは立ち読み客のそばへ行ってわざとらしく鳴くのさ」
「でも御代といっても何にも持ってないし……」 
「しょうがないわね、17分だったけど、負けといてあげるから。ほら、さっさとお行き」
 どうしてそんなに正確な時間が測れるのか、子ネコには不思議だったが、言われた通り立ち去った。損をしたのか得をしたのかよくわからないままに。

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