心のつぶやきを吐き出す裏ブログです。
ブログのプロフィール
〈管理人名〉 O-bake
〈趣味〉 創作とクラシック音楽
〈主な内容〉
創作に関する覚書
ごくたまに掌編を掲載
テリトリーは童話からYAまで
〈お願い〉
時々、言葉が足りないために意味不明な文章があったり、攻撃的な文章がありますが、ここは毒吐き場なので、どうぞ見過ごしてやってください。
〈連絡先〉
管理人へのメッセージは、こちらのフォームからどうぞ
〈本家ブログ〉
びおら弾きの微妙にズレた日々
(一方通行です)
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昔HPに掲載していた話の焼き直し版です。
シーズンなので引っ張り出してみました。もちろん死神ネタ。
シーズンなので引っ張り出してみました。もちろん死神ネタ。
ZとYとX'mas
ある冬の晩のことだった。久しぶりの街に降り立った死神Zは息をのんだ。
とっくに日が暮れているはずなのに、目の前の公園は、ひどく明るい。頂上に星を抱き、にぎやかに飾りつけられた大木が目を引く。公園のシンボルである時計台もまた強烈な光で照らされ、やけに大きく見えた。木という木が光をまとい、噴水は七色の光に照らされ、公園のまわりに立ち並ぶ店やビルは、ライトアップに合わせて大きなツリーやサンタを飾り、光のラインで思い思いに模様を描いている。そんな中を、人々は足早に、あるいは軽やかに歩いたり立ち止まったりしていた。
「そうか、もうそんな季節か」
彼はつぶやきつつ、公園に背を向け、暗がりに沈む住宅地へと急いだ。死神は基本的に人の目に写らない。彼は人ごみを気にすることもなく、すべるように目的地へと移動する。
ビルの並びから数百メートルも離れれば、そこは昔からこの土地に住まう人々の場所だった。古い住宅が立ち並ぶ狭い路地へ入りこむと、つつましやかな蛍光灯の光が道にこぼれ、クリスマスソングに代わって、テレビの音声、あるいは人の話し声や食器が触れ合う音が聞こえてくる。
Zはスピードを落とした。しばらくすると情報通り、ぼぅっと光る小さな玉が浮いていた。彼はかついでいた大鎌を両手で構えた。
「さ、来いよ。今生ではネコだったおまえも、生まれ変わったらもう少しマシなもんになるかもしれないぜ」
光の玉は素直に寄って来る。Zは大鎌で光る玉をすくいとるようにした。光の玉は大鎌の中へすっと溶けていった。ネコにしては珍しく手のかからないやつだと大鎌をながめていると、すぐわきの家から声がもれてきた。
「どうしてあの子が死じゃうの? あんなにかわいいくて素直なネコはいなかったのに……」
続いてしゃくりあげる音。Zはいまいましげに声の方向をにらむ。
「どうしてもクソもあるか。生きてるからには必ず死ぬんだ」
彼は急いでその場を去った。ネコの魂が暴れ出しすかもしれない、というのは口実で、あんな嘆きを聞くたびに、ただでさえ気の進まない仕事がさらにやりにくくなるからだ。気づけば、彼は逃げるように飛んでいた。
病院の横を過ぎる。病棟でひっそりとイブを迎える人々。
牛丼屋のそばを通りぬける。独り者の男同士、半ばヤケで盛り上がっている。
オフィスビルの前を横切る。中で黙々と仕事を片付けるサラリーマン。
いつしか公園まで戻っていた。ふと時計台を見やれば、その足元に待ち人顔でたたずむ青年がいる。彼のまわりを何組ものカップルが笑いさざめきながら過ぎて行く。
「誰と待ち合わせをしてるんだか」
ドン!
何かがZにぶつかった。
「こらこらZくん、どこ見て飛んでるかなぁ」
黒いマントに鈍く光る大鎌をかかえた姿は、もう一人の死神、Yだった。彼も忙しいらしい。
「よそ見はお互いさまだろ。だいたい、今日の街はやたら騒がしくてやりにくいんだ」
Yは肩をすくめた。
「なんといってもイブの夜ですからね。我々にはもはや関係無いことですが」
「死神は年中無休だからな。クリスマスだって正月だって死ぬものは死ぬ」
「その通り。私はこれからホームレスの魂を拾いに行ってきますよ」
その直後だった。女の子が小走りに時計台へ向かってくるのが見えた。彼女はよほど急いでいたのだろう。ろくに左右を確かめもせず道路を横切ろうとする。駐車車両のかげから車がすっと飛び出してきたのも気がつかず。
「ばかっ、止まれよ!」
Zは思わず叫んでいた。が、その声が彼女にとどくはずもなく。
凄まじいブレーキ音が鳴り響いた。彼の頭の中は真っ白になって、自分が死んだ瞬間に舞い戻っていた。車に跳ね飛ばされ、地面に叩きつけられた衝撃がよみがえる。意識を失いかけ、地面へと落ちてゆく。かすむ視界のはしで、Yが大鎌を振り下ろしているのが見えた。
――あいつ何やってるんだ? まさか彼女の魂を?――
Zはたちどころに正気を取り戻し、体勢を立て直した。そこへYがやってきた。
「大丈夫ですか?」
「なに、めまいがしただけだ」
「へえ、霊体なのに今さら?」
Zは言い訳するかわりに、Yのわきをすりぬけて時計台のてっぺんにすわった。ここなら下から照らすライトは当たらない。Yもすぐ後をついてきて、隣に落ちついた。
下からひときわ楽しそうにはしゃぐ女の子の声がひびき、それに答える青年らしき声がした。のぞいてみれば、さっきの女の子が待ち合わせの相手と腕を組んで歩き出すところだった。Zは心の中でほっとため息をついた。同時に大きな疑問がわく。
「あんた、さっき大鎌を振り下ろしていただろ。魂を切り離す必要がなかったにもかかわらず」
ZはYをほとんどにらみつけるようにして言った。Yはため息をついた。
「目撃者がいるのを忘れてましたよ」
「やっぱりそうだったのか」
Yはきまり悪そうに目をそらした。
「時間を操作したといっても、ほんのわずかです。1秒もずれれば、衝突はまぬがれます」
「たとえ1秒だって、立派な規則違反だぞ! 生きている人間の時間に干渉するなんて!」
「君に言われる筋合いはないと思うけれど、ちがいますか」
Zは答えに詰まった。いつも違反をして反省部屋の常連となっている彼は一言も言い返せない。いろいろ言葉をさがした挙げ句につぶやいた。
「珍しいな。いつもきちんと仕事をこなすあんたがさ」
Yはしばらく夜景をながめたままだった。街のざわめきがもやのように立ち上ってくる。
「……死神が、命を落とした私を迎えに来たのは、ちょうどイブの晩でした。待ち合わせの約束も渡すはずだったプレゼントも、何もかも果たせないまま、あの世、いや冥界に行かなければなりませんでした」
「そりゃ死ぬに死ねないな。死神にもなるわけだ」
Zだって同じような経歴を持っている。
「だからって生きてる人間の時間を勝手にいじっていいものか?」
「さあ……。君ならどうします?」
Yが振り向き、二人の目が合った。Zがニヤッと笑う。Yもつられて微笑む。
「心配するな、監視役をごまかすぐらいわけないさ。少なくともオレにとってはな」
「借りが、一つできましたね」
Zは答える代わりに視線を遠くへ飛ばした。その先には家々の明かりと、かすかに光る本物の星がある。
「早くこんな仕事から解放されて、天界へ行きたいもんだ」
「そうですね……」
「あんたはまだいい。人間の魂を迎えに行けるんだから」
「まあ、君よりはゴールが近いかもしれませんが」
反省部屋がたたって先が長いZである。
「おかしなものです。まだ私が死神になって間もないころ、クリスマスが近づくたびに上っ面だけ浮かれる人間は、見るのも嫌でした。でも、気がつけば違反までして人を救ってしまう。このごろになってやっと、クリスマスの存在理由がわかってきたような気がするんですよ」
Yはつっと立ちあがり、街を見渡した。すぐ下にはクリスマスのイルミネーション、それを囲むように行き交う車のライトときらめく店先。その向こうには家々の明かりがつらなる。光のあるところでそれぞれ人は自分なりの暮らしを送っている。
「せめて今宵だけはすべての人々が心安らかに過ごせますように」
Yから祈りの言葉がもれる。Zは苦笑いを浮かべた。
「ふん、そんなあり得るはずのないことを」
「だからこそ、願うんですよ。一年に一日くらい、そういう日があってもいいじゃないですか」
ZはYを見上げた。
「たしかに、それも一理あるな」
Zは立ちあがり、浮いた。
「さて、仕事の続きをしにいくとするか。あんたもあまりサボってると、オレみたいに天界行きがおくれるぜ? じゃあな。……メリークリスマス」
言い終わるか終わらないかのうちに、Zは闇の中へ消えた。
「君にも、メリークリスマス」
Yもまた仕事を再開するべく飛び立った。
後にはいつもと同じ、クリスマスの光景。
ある冬の晩のことだった。久しぶりの街に降り立った死神Zは息をのんだ。
とっくに日が暮れているはずなのに、目の前の公園は、ひどく明るい。頂上に星を抱き、にぎやかに飾りつけられた大木が目を引く。公園のシンボルである時計台もまた強烈な光で照らされ、やけに大きく見えた。木という木が光をまとい、噴水は七色の光に照らされ、公園のまわりに立ち並ぶ店やビルは、ライトアップに合わせて大きなツリーやサンタを飾り、光のラインで思い思いに模様を描いている。そんな中を、人々は足早に、あるいは軽やかに歩いたり立ち止まったりしていた。
「そうか、もうそんな季節か」
彼はつぶやきつつ、公園に背を向け、暗がりに沈む住宅地へと急いだ。死神は基本的に人の目に写らない。彼は人ごみを気にすることもなく、すべるように目的地へと移動する。
ビルの並びから数百メートルも離れれば、そこは昔からこの土地に住まう人々の場所だった。古い住宅が立ち並ぶ狭い路地へ入りこむと、つつましやかな蛍光灯の光が道にこぼれ、クリスマスソングに代わって、テレビの音声、あるいは人の話し声や食器が触れ合う音が聞こえてくる。
Zはスピードを落とした。しばらくすると情報通り、ぼぅっと光る小さな玉が浮いていた。彼はかついでいた大鎌を両手で構えた。
「さ、来いよ。今生ではネコだったおまえも、生まれ変わったらもう少しマシなもんになるかもしれないぜ」
光の玉は素直に寄って来る。Zは大鎌で光る玉をすくいとるようにした。光の玉は大鎌の中へすっと溶けていった。ネコにしては珍しく手のかからないやつだと大鎌をながめていると、すぐわきの家から声がもれてきた。
「どうしてあの子が死じゃうの? あんなにかわいいくて素直なネコはいなかったのに……」
続いてしゃくりあげる音。Zはいまいましげに声の方向をにらむ。
「どうしてもクソもあるか。生きてるからには必ず死ぬんだ」
彼は急いでその場を去った。ネコの魂が暴れ出しすかもしれない、というのは口実で、あんな嘆きを聞くたびに、ただでさえ気の進まない仕事がさらにやりにくくなるからだ。気づけば、彼は逃げるように飛んでいた。
病院の横を過ぎる。病棟でひっそりとイブを迎える人々。
牛丼屋のそばを通りぬける。独り者の男同士、半ばヤケで盛り上がっている。
オフィスビルの前を横切る。中で黙々と仕事を片付けるサラリーマン。
いつしか公園まで戻っていた。ふと時計台を見やれば、その足元に待ち人顔でたたずむ青年がいる。彼のまわりを何組ものカップルが笑いさざめきながら過ぎて行く。
「誰と待ち合わせをしてるんだか」
ドン!
何かがZにぶつかった。
「こらこらZくん、どこ見て飛んでるかなぁ」
黒いマントに鈍く光る大鎌をかかえた姿は、もう一人の死神、Yだった。彼も忙しいらしい。
「よそ見はお互いさまだろ。だいたい、今日の街はやたら騒がしくてやりにくいんだ」
Yは肩をすくめた。
「なんといってもイブの夜ですからね。我々にはもはや関係無いことですが」
「死神は年中無休だからな。クリスマスだって正月だって死ぬものは死ぬ」
「その通り。私はこれからホームレスの魂を拾いに行ってきますよ」
その直後だった。女の子が小走りに時計台へ向かってくるのが見えた。彼女はよほど急いでいたのだろう。ろくに左右を確かめもせず道路を横切ろうとする。駐車車両のかげから車がすっと飛び出してきたのも気がつかず。
「ばかっ、止まれよ!」
Zは思わず叫んでいた。が、その声が彼女にとどくはずもなく。
凄まじいブレーキ音が鳴り響いた。彼の頭の中は真っ白になって、自分が死んだ瞬間に舞い戻っていた。車に跳ね飛ばされ、地面に叩きつけられた衝撃がよみがえる。意識を失いかけ、地面へと落ちてゆく。かすむ視界のはしで、Yが大鎌を振り下ろしているのが見えた。
――あいつ何やってるんだ? まさか彼女の魂を?――
Zはたちどころに正気を取り戻し、体勢を立て直した。そこへYがやってきた。
「大丈夫ですか?」
「なに、めまいがしただけだ」
「へえ、霊体なのに今さら?」
Zは言い訳するかわりに、Yのわきをすりぬけて時計台のてっぺんにすわった。ここなら下から照らすライトは当たらない。Yもすぐ後をついてきて、隣に落ちついた。
下からひときわ楽しそうにはしゃぐ女の子の声がひびき、それに答える青年らしき声がした。のぞいてみれば、さっきの女の子が待ち合わせの相手と腕を組んで歩き出すところだった。Zは心の中でほっとため息をついた。同時に大きな疑問がわく。
「あんた、さっき大鎌を振り下ろしていただろ。魂を切り離す必要がなかったにもかかわらず」
ZはYをほとんどにらみつけるようにして言った。Yはため息をついた。
「目撃者がいるのを忘れてましたよ」
「やっぱりそうだったのか」
Yはきまり悪そうに目をそらした。
「時間を操作したといっても、ほんのわずかです。1秒もずれれば、衝突はまぬがれます」
「たとえ1秒だって、立派な規則違反だぞ! 生きている人間の時間に干渉するなんて!」
「君に言われる筋合いはないと思うけれど、ちがいますか」
Zは答えに詰まった。いつも違反をして反省部屋の常連となっている彼は一言も言い返せない。いろいろ言葉をさがした挙げ句につぶやいた。
「珍しいな。いつもきちんと仕事をこなすあんたがさ」
Yはしばらく夜景をながめたままだった。街のざわめきがもやのように立ち上ってくる。
「……死神が、命を落とした私を迎えに来たのは、ちょうどイブの晩でした。待ち合わせの約束も渡すはずだったプレゼントも、何もかも果たせないまま、あの世、いや冥界に行かなければなりませんでした」
「そりゃ死ぬに死ねないな。死神にもなるわけだ」
Zだって同じような経歴を持っている。
「だからって生きてる人間の時間を勝手にいじっていいものか?」
「さあ……。君ならどうします?」
Yが振り向き、二人の目が合った。Zがニヤッと笑う。Yもつられて微笑む。
「心配するな、監視役をごまかすぐらいわけないさ。少なくともオレにとってはな」
「借りが、一つできましたね」
Zは答える代わりに視線を遠くへ飛ばした。その先には家々の明かりと、かすかに光る本物の星がある。
「早くこんな仕事から解放されて、天界へ行きたいもんだ」
「そうですね……」
「あんたはまだいい。人間の魂を迎えに行けるんだから」
「まあ、君よりはゴールが近いかもしれませんが」
反省部屋がたたって先が長いZである。
「おかしなものです。まだ私が死神になって間もないころ、クリスマスが近づくたびに上っ面だけ浮かれる人間は、見るのも嫌でした。でも、気がつけば違反までして人を救ってしまう。このごろになってやっと、クリスマスの存在理由がわかってきたような気がするんですよ」
Yはつっと立ちあがり、街を見渡した。すぐ下にはクリスマスのイルミネーション、それを囲むように行き交う車のライトときらめく店先。その向こうには家々の明かりがつらなる。光のあるところでそれぞれ人は自分なりの暮らしを送っている。
「せめて今宵だけはすべての人々が心安らかに過ごせますように」
Yから祈りの言葉がもれる。Zは苦笑いを浮かべた。
「ふん、そんなあり得るはずのないことを」
「だからこそ、願うんですよ。一年に一日くらい、そういう日があってもいいじゃないですか」
ZはYを見上げた。
「たしかに、それも一理あるな」
Zは立ちあがり、浮いた。
「さて、仕事の続きをしにいくとするか。あんたもあまりサボってると、オレみたいに天界行きがおくれるぜ? じゃあな。……メリークリスマス」
言い終わるか終わらないかのうちに、Zは闇の中へ消えた。
「君にも、メリークリスマス」
Yもまた仕事を再開するべく飛び立った。
後にはいつもと同じ、クリスマスの光景。
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