今年最後の公募作品もまた、いつものごとく奇跡的に最後までたどりつき、無事に送り出すことができた。今回の題材は、春先に迷子になりかけた公園＆神社が舞台。モデルになる地区を実際目にしたことで、物語の世界がずいぶん作りやすくなったし、取材の効力を実感した体験でもあった。

しかし、この10月はじつにやばかった。毎週１～２回は人と会う約束があったりイベントに出る予定があって、それ自体は、すべて自分の肥やしになるのでやぶさかではないのだが、なにぶん一日＝２４時間、一か月＝３１日と決まっている。おまけに中旬に体調をくずしかけてえらい目にあった。
だが、今回は不思議なことがふたつあった。なぜか「今書いている作品は期日までに必ず完成する」という根拠のない自信があったことがひとつ。もうひとつは余分なお出かけをしようとしたところ、よくわからない力が働いて引き留められたことだった。

余分なお出かけというのは、愛トリ2016の見残した会場巡りのことで、もともとは大事なお出かけになるはずだったのだが、今年の愛トリはちょっと大人しいらしいという噂で迷いが生じ、結果論から言えば、原稿の完成と天秤にかけたとき、どちらが重いかと言えば、ねぇ……となった。
その日は、ダンナ氏も休日。彼は自転車乗りに山方面へ出かけたので自分はトリエンナーレを見に行こう、ラストチャンスだ、と思っていたのだ。ところが、いざ出かけようとしたときに「車のカギをどこかで落とした」と連絡が。もし見つからなければ迎えに行くのか……？　としばらく待機したものの、まあ自分でどうにかして帰ってくるでしょ、と家を出た五分後、再びラインで「困った、鍵が出てこない」と。ああこれはもう家から出るなということかと、引き返して作品書きに取り組みんだ。すると「カギ発見」の知らせが。この瞬間、家で作品書きをするのが正解だと知りましたよ。あとで振り返ってみるとその日でかけていたら、締め切りまでに作品が出来上がっていなかった可能性が高い。

その後「ゴーストのささやき」に従うかのようにしてひたすら書き続け、最後まで通ったのが締め切り二日前……。毎回綱渡り的な状況に陥るのを何とかしようとは思うのだが、時間があればあったで、あらぬ方向へと改稿してしまう可能性もあるので、吉と出るか凶と出るかは神の味噌汁です。