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心のつぶやきを吐き出す裏ブログです。
ブログのプロフィール
〈管理人名〉 O-bake

〈趣味〉 創作とクラシック音楽

〈主な内容〉
創作に関する覚書
ごくたまに掌編を掲載
テリトリーは童話からYAまで

〈お願い〉
時々、言葉が足りないために意味不明な文章があったり、攻撃的な文章がありますが、ここは毒吐き場なので、どうぞ見過ごしてやってください。

〈連絡先〉
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びおら弾きの微妙にズレた日々
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東日本大震災以降(個人的には「ダンナの実家が焼けちゃった事件」以後)、創作された言葉(小説だけでなく、雑誌の記事やブログやツイッターなどweb上の文章も含む)に対してアレルギーみたいな拒絶反応を起こしていて、しかもそれが数週間どころか2ヶ月以上続くのでどうなることやらと自分でも面白半分で観察していたが、先日、図書館でよい処方箋を入手した。

高橋源一郎「さよなら、ニッポン ニッポンの小説2」

いつもツイッター上で一方的にお世話になっている作家さんで、深夜、不定期に流れてくる「深夜ラジオ」にはよく耳を傾けていた。(今はほとんどツイッターをのぞかないので、深夜ラジオにもご無沙汰中)

作品を論じた文章や論じる行為なんて、もう2年ぐらい前から拒否反応を起こしていたけれど(だから自分がブログにのせる本の紹介は、本当に感想とまとめだけ)、この人の評論は面白いと心底思った。先日読んだ小説の「『悪』と戦う」よりも面白かった。「『悪』と戦う」も恐らくすごい作品なのだろうけど、自分の読みの能力と感性がついてゆけなかっただけの話だと思う。
どのくらい面白かったかというと、村上春樹の小説を読むのと同じくらい。村上さんは自前の物語世界を作り、その世界を提示することによって私たちがいる世界がどんなものかを見せてくれるが、高橋氏は、今そこにある小説を題材にし、それを解剖することで、私たちのいる世界の秘密に迫ってゆく。その態度の真摯なこと。まず、言葉の力と限界を見切っている。決して借り物ではない言葉を使い、「紋切り型」の言葉遣いや思考を避け、自らの内側から発した思考と言葉を頼りに小説を読みといてゆくのだ。それはもう一種の創造行為。

小説というのは、言葉にできない何かを必死で言語化しようとする、ある意味虚しい作業だなぁと日ごろ思っていたが、それは実は虚しいことではなく、創造という行為の根幹にある作業なんだと知った。
この世界には言葉にしようのないもので溢れていて、人間は便利に生きるために言葉にできないものを無理やり言葉にする。すると必然的に言語化し損なった何かがこぼれて落ちるけれど、それに気づいて拾い上げ、新たに形を与えようとするのが芸術家と呼ばれる人種なのだと思う。新たな形とは音でもいいし、色や形でもいい。言葉にしきれないものを表すなら、言葉に頼らないメディアがいい。もし言葉にしきれない何かを言葉で表そうとするなら、普段遣いの言葉を使ってはいけない。特別な言葉が必要で、その特別な言葉を使って表現したのが小説だと、そういうことらしい。特別な言葉を使って構築された世界は、たとえ作られた世界であっても、どこかで必ず現実(と私たちが認識している世界)とリンクし、響き合っている。

ここで「特別な言葉」って何? どうやって作るの? という質問はナシの方向で。なぜならそれは作家の一番の秘密だから、という以前に私も知りたい。でもそれは外部に求めちゃいけない。外に答えを求めていると、結局借り物の言葉で埋まってしまう。自分がどうっやって世界と関わっているのか、を深く考えれば自然と道筋が見えてくるものじゃないのかな。

たぶん、私が拒絶反応を示していたのは、借り物の言葉で構築された本当に虚構な世界。
物語が読めなくてもノンフィクションや新聞記事なら受け付けたのも、そこには事実誤認があったとしても嘘はなかったからだと思う。

そして、ここから先がとても大切なことで、これまで私は自分の書いた物語は嘘っぱちばかりだな、と思っていた。誰がどう評価しようが偽物なのだと。偽物を書きたくて書いたのではなく、どうすれば本物になるかわからず、迷いながらとにかく書き続けた。筆を止めたら偽物すら書けなくなると思っていたから。でもそれは、大震災までが限界だったらしい。

心の声に忠実に、時には心の声さえ嘘に侵食されていないかどうか慎重に確かめながら耳を澄ませて書いたなら、(もちろん今までもそうしようと努力してきたけど)どんなものが出てくるだろうか。結局「人には見せられない」とか言って隠してしまうかもしれないな。
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