心のつぶやきを吐き出す裏ブログです。
ブログのプロフィール
〈管理人名〉 O-bake
〈趣味〉 創作とクラシック音楽
〈主な内容〉
創作に関する覚書
ごくたまに掌編を掲載
テリトリーは童話からYAまで
〈お願い〉
時々、言葉が足りないために意味不明な文章があったり、攻撃的な文章がありますが、ここは毒吐き場なので、どうぞ見過ごしてやってください。
〈連絡先〉
管理人へのメッセージは、こちらのフォームからどうぞ
〈本家ブログ〉
びおら弾きの微妙にズレた日々
(一方通行です)
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07 割引セール
何かお礼に差し出せるようなものがないかと、子ネコはあちこちに目配りをしながら歩いていった。すえたにおいがただようゴミ置き場の横を通る。あいにく出されたばかりのゴミ袋はない。側溝の中にネズミのしっぽが見えたような気がしたが、子ネコが相手にできるような生き物ではない。だいたい、彼女が育った家ではネズミはおろか、丸っこく黒光りして、人間がやたらと嫌がる昆虫すらめったに見かけることはなかった。
子ネコはいつしか大通りに戻っていた。排ガスのにおい、タバコのにおい、甘ったるいガムのにおい、さまざまなにおいが渦巻いている。その中でもひときわ雑多なにおいがもれてくる場所に気がついた。そこからはにおいだけでなく、さまざまな音が騒々しく流れ出していた。
子ネコは少し離れた場所に身を潜め、様子をうかがう。ガラスの扉がひっきりなしに開き、人間が忙しそうに出たり入ったりしていた。その大部分は女性で、出てくるときには袋に食料をたっぷり詰め込んでいるのだった。それだけで充分な誘惑なのに、さらに旨そうなにおいがただよってきた。
「ただ今から本日最後のタイムサービスを行います。新鮮な魚がなんと3パックで880円!
今夜のおかずにいかがですか!」
警戒心より好奇心の方が勝った。
子ネコはガラガラとうるさく動き回るカートにまぎれて中に入ろうとした。だが、たまたまカートの中にすわっていた子どもが子ネコを見つけていた。
「ママ、ネコがいるよ!」
子ネコはあわててその場を離れなくてはいけなかった。
しかし、彼女はあきらめない。建物の裏側にまわった。すると、金属製のドアから細くもれる光に気づいた。すき間からのぞくと、ゴム長に白いエプロンをつけた人間たちがせわしなく立ち回っているのが見える。いっそう強くなった魚のにおいが胃袋を刺激する。
子ネコは舌なめずりしながら、半開きのドアをわずかに押し開けた。銀色に光る魚がいっぴき、人間の手元から滑り落ちる。人間が「アジ」と呼ぶその魚めざして、子ネコは中にとびこんだ。あっという間に獲物をくわえた。
「×××××!」
泥棒に気づいた人間が罵声をあびせかけた。子ネコは考えるひまもなく、目に付いた出口から外に出た。あとは全力疾走あるのみ。
……のはずだった。しかし、子ネコの前では多勢の人間がうごめいている。すぐ近くの棚から冷気が下りて来る。入った入り口と違うところから出たらしい。かといって戻ったら間違いなくつかまるだろう。
子ネコは所構わず、空いている空間をぬうようにして走り回った。ワゴンの下、陳列棚の上をかけぬけ、レジの上をジャンプ。
人間たちがあげる悲鳴とも怒号ともつかない声の中、子ネコは、ほうほうの体で恐怖の建物から逃げだした。触りもしないのに勝手に閉じたり開いたりするガラスの扉をどうやってすりぬけたのかも覚えていない。
しばらくして正気に戻ったころに、子ネコはまったく見知らぬ場所にいた。あたりは草や低木がしげり、少し離れたところに家がぽつりぽつりと見える。大通りの明かりが遠くでぼんやり光っている。トラネコと出会った公園の場所はまるで見当がつかない。急に疲れが押し寄せてきて、結局子ネコは魚を食べて寝てしまった。
何かお礼に差し出せるようなものがないかと、子ネコはあちこちに目配りをしながら歩いていった。すえたにおいがただようゴミ置き場の横を通る。あいにく出されたばかりのゴミ袋はない。側溝の中にネズミのしっぽが見えたような気がしたが、子ネコが相手にできるような生き物ではない。だいたい、彼女が育った家ではネズミはおろか、丸っこく黒光りして、人間がやたらと嫌がる昆虫すらめったに見かけることはなかった。
子ネコはいつしか大通りに戻っていた。排ガスのにおい、タバコのにおい、甘ったるいガムのにおい、さまざまなにおいが渦巻いている。その中でもひときわ雑多なにおいがもれてくる場所に気がついた。そこからはにおいだけでなく、さまざまな音が騒々しく流れ出していた。
子ネコは少し離れた場所に身を潜め、様子をうかがう。ガラスの扉がひっきりなしに開き、人間が忙しそうに出たり入ったりしていた。その大部分は女性で、出てくるときには袋に食料をたっぷり詰め込んでいるのだった。それだけで充分な誘惑なのに、さらに旨そうなにおいがただよってきた。
「ただ今から本日最後のタイムサービスを行います。新鮮な魚がなんと3パックで880円!
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警戒心より好奇心の方が勝った。
子ネコはガラガラとうるさく動き回るカートにまぎれて中に入ろうとした。だが、たまたまカートの中にすわっていた子どもが子ネコを見つけていた。
「ママ、ネコがいるよ!」
子ネコはあわててその場を離れなくてはいけなかった。
しかし、彼女はあきらめない。建物の裏側にまわった。すると、金属製のドアから細くもれる光に気づいた。すき間からのぞくと、ゴム長に白いエプロンをつけた人間たちがせわしなく立ち回っているのが見える。いっそう強くなった魚のにおいが胃袋を刺激する。
子ネコは舌なめずりしながら、半開きのドアをわずかに押し開けた。銀色に光る魚がいっぴき、人間の手元から滑り落ちる。人間が「アジ」と呼ぶその魚めざして、子ネコは中にとびこんだ。あっという間に獲物をくわえた。
「×××××!」
泥棒に気づいた人間が罵声をあびせかけた。子ネコは考えるひまもなく、目に付いた出口から外に出た。あとは全力疾走あるのみ。
……のはずだった。しかし、子ネコの前では多勢の人間がうごめいている。すぐ近くの棚から冷気が下りて来る。入った入り口と違うところから出たらしい。かといって戻ったら間違いなくつかまるだろう。
子ネコは所構わず、空いている空間をぬうようにして走り回った。ワゴンの下、陳列棚の上をかけぬけ、レジの上をジャンプ。
人間たちがあげる悲鳴とも怒号ともつかない声の中、子ネコは、ほうほうの体で恐怖の建物から逃げだした。触りもしないのに勝手に閉じたり開いたりするガラスの扉をどうやってすりぬけたのかも覚えていない。
しばらくして正気に戻ったころに、子ネコはまったく見知らぬ場所にいた。あたりは草や低木がしげり、少し離れたところに家がぽつりぽつりと見える。大通りの明かりが遠くでぼんやり光っている。トラネコと出会った公園の場所はまるで見当がつかない。急に疲れが押し寄せてきて、結局子ネコは魚を食べて寝てしまった。
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