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心のつぶやきを吐き出す裏ブログです。
ブログのプロフィール
〈管理人名〉 O-bake

〈趣味〉 創作とクラシック音楽

〈主な内容〉
創作に関する覚書
ごくたまに掌編を掲載
テリトリーは童話からYAまで

〈お願い〉
時々、言葉が足りないために意味不明な文章があったり、攻撃的な文章がありますが、ここは毒吐き場なので、どうぞ見過ごしてやってください。

〈連絡先〉
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〈本家ブログ〉
びおら弾きの微妙にズレた日々
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君の街まで約5分
配布元 約30の嘘

お題再開。めざせクリスマス前の完走!


06 野良猫と魚の骨

「おい、お前新入りか?」
 公園のかたすみでふくらんだしっぽをなだめていた子ネコは、びくんと振り返った。そこにいたのはトラ模様の大きなオスネコだった。片耳が半分欠け、顔には大きな傷がついている。しっぽはコップ洗いブラシのようだった。いかつい顔つき、鋭い目つき。
 子ネコはすくんだ。トラネコが一歩踏み出した。次の瞬間、子ネコは逃げ出していた。道路を突っ切ろうとした。そこへ車が通りかかった。子ネコの目にライトの光がはいる。子ネコはまぶしさのあまり何も見えなくなった。頭の中が真っ白になって動けなくなる。
 黒っぽいかたまりが物凄い速さでぶつかってきて、体が宙に浮いた。

 しばらくたって子ネコは目を開けた。体を起してみた。ちゃんと動けるし、ひどく痛むところもない。目の前に魚の骨がある。見上げるとさっきのトラネコがいた。
 轢かれていたかもしれない子ネコを救い出したのは、このトラネコだった。信じられない速さで子ネコを車の前からさらっていったのだった。伊達に体格がいいわけじゃないのだと子ネコは心底感心した。
 トラネコは子ネコが魚をかじり終え、しっかり立ち上がるところを見届けると、立ち去ろうとした。
「お礼、したいんだけど……」
 トラネコは足を止めて振り返った。
「顔を見るなり逃げ出すようなマネをしなけりゃ、それでいいさ」
 子ネコは困った。あの白黒キャシーのでっぷりした姿が頭に浮かんでいた。
「こんど、さかなをもってくる。骨じゃなくて身のついたやつ」
 トラネコはフン、と笑った。
「野良がそんな上等なもん食ったら、腹壊しちまう。動けるんなら、早く帰りな。あんたみたいな飼いネコのお嬢さんがチョロチョロしていると、面倒のもとなんだ」
 トラネコは姿を消した。でも子ネコはかすかな視線を感じていた。ここから移動しない限り、彼は落ち着かないのだろう。
――さっきのでぶネコの話が本当なら、家は近いんだし、帰る前に寄り道してみよう。
 子ネコは再び明るく賑やかな方角へと足を進めた。ただ、彼女が帰るべき家の場所を本当に知っていたかどうかは定かでない。
 
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