久しぶりにオーケストラの本番に乗ることになり、お手伝いをする楽団へ出向いたら、知り合いが多数いて、ホームオケにいるような錯覚を起こしたのが約2ヶ月前。

特にビオラパートなんて全員が過去に一度は一緒に弾いたことがあるばかりか、学生時代の先輩後輩もいて、プチ同窓会状態だったというね。

そんな中で弾いて楽しくないわけがない。なんなら魂の居場所へ帰ってきた感満載と言ってもいいが、楽しい時間を過ごしたあとは、またまたアウェイ感だらけの職場へ戻らなくてはならないのがツラくて、毎回精神のバランスを取るのが大変だ。

昨日も充実した練習のなか、休憩中に会場ロビーの素敵なイスに腰掛けて、お茶を飲みながらぼんやり外を眺めていた。日曜の午後のことで、たいていの人が休日を楽しんだり用事をすませるために車を走らせ、あるいは徒歩や自転車で買い物に出かけたりする。色んな人が色んな理由でそれぞれ動いている。その人達が抱えている感情は決して心地よいものばかりではなく、不満や怒り、諦め、あるいは無感情だってあるだろう。だけども――

世界はそれでいいのだと思った。思うと同時に、景色のすべてにさまざまな色がついて見えた。目に映る以上の色数が。世の中は暴力や悲嘆や無理解にあふれているのと同じくらい喜びや幸せな偶然に満ち、それらが混沌のように混じり合って、カオスな色合いを生み出している。これが今、自分のいる世界だ。なんて世界にいるのだろうと、我ながら驚いた。"Sense of Wonder"が働いた瞬間だ。

驚いただけでなく、以前の立ち位置にようやく帰ってくることができたな、と安堵感に包まれた。ただいま＆おかえりなさい、だ。

帰りの車を運転しつつ、梅雨時特有の低く渦巻く雲を見ながら思った。もしも普通の人が知覚しないものまで感じ取れるがために、自分を見失ってしまう人がいたとして、彼／彼女は最終的にこの世界で最も複雑で精緻で得も言われぬ美しさを湛えた、世界という名のタペストリーを目にするチャンスを得ているのではないだろうかと。もっとも、その美しさと不可思議さに耐えられる精神力（体力ともいう）を身に着けていないと、やっぱり身を滅ぼすことになるだろうけど。